Vol.4 看護師の黒田咲恵さん(トリプルネガティブ、ステージ3a)の乳がんストーリー
- ゆかり
- 2023年7月13日
- 読了時間: 28分
更新日:2023年7月27日
*ポッドキャストの内容を書き起こして記事にしています。読みやすさを優先して微編集を加えています。
*内容は、ポッドキャスト収録時点の話です。収録と配信までにはタイムラグがありますのでご了承ください。
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こんちわ(根治の輪)第4回へようこそ。今回のゲストは、黒田咲江さん(さきさん)です。36歳、看護師さんとして仕事をされています。2023年3月に左胸に乳がんが見つかって、タイプはトリプルネガティブでステージは3aです。
わたしはホルモン陽性タイプの乳がんのステージ3なので抗がん剤のお薬は違いすが、さきさんと治療の流れはほぼ一緒で、いまちょうど同じタイミングで治療が進んでいます。一度も直接お会いしたことはないけれど、わたしにとってとっても心強い存在です。
さきさんの乳がんが発覚したのは2023年の3月で、わたしは4月末だったので本来なら彼女のほうが先のはずなんですが、彼女の乳がん記録用のインスタアカウントにもあるように、3週間近く逃亡されていた期間があって、今回はその理由についても伺いました。
さきさんは独身でいらしゃって、乳がんが発覚する前に今のパートナーとの出会いがあったそうです。これから結婚をしてこどもも欲しいと思い出した矢先での乳がん発覚に彼女がどう向き合ったのか、逃げていた抗がん剤治療を決意した理由、乳がんになったことで感じた仕事ができることのありがたさなど幅広く伺いました。
本名でやっていらっしゃる本アカのプロフィールに、「死ぬこと以外かすり傷」とあって、とってもかっこいいです。それでは、黒田咲恵さんの乳がんストーリーをお聞きください。
さきさんのインスタグラムは、@alice_sk3(本アカ)と@breast_cancer_saki(治療アカ)です。
書き起こし
ゆかり:こんちわ(根治の輪)ゲスト第3弾はさきさんです。よろしくお願いします。
さき:お願いします。
ゆかり:さきさんはインスタグラムでフォローさせてもらうようになって、ちょうど治療のスケジュールが近くて。わたしは先週パクリタキセルの7回目を打ったんですけど、さきさんもそう?
さき:一緒ですね。次が8回目です。ほんとに一緒。
ゆかり:そう、それが心強くって。毎回白血球の数が〜みたいなのも同じタイミングでドキドキしてるから(笑)。簡単に自己紹介をお願いしてもいいですか。
さき:はーい。さきです。年齢は36歳独身で看護師をしております。今年の3月に脇のリンパ節転移を発見して、そこから検査を受けて乳がんの診断を受けて、ステージとしては3aかなと言われて治療が始まりました。
ゆかり:発見に至った経緯を聞いてもいいですか。
さき:まず胸のしこりに気がついたのは去年(2022年)の10月。もともと右胸にしこりがあったのがなくなって左胸に出てきたんで、また似たようなものかなって思っていたのと、左胸に出てきたときにめちゃくちゃ痛かったんですね、最初。
ゆかり:あ、最初から痛かったんですか。
さき:はい、最初ぎーってして、胸ポケットにボールペンをいれるときに擦れるのも痛くて、こんなに痛いの何?って思ったんですが、がんの初期症状は痛みがないっていう知識があったので、これは何か別のものだなって。
しかも日によって痛みがなかったり柔らかくなったり変動するので、これはがんじゃないなって思っておいてたんですね。本当にまったく痛みがない期間もあったので。
で、今年の2月にパートナーができて、今後結婚みたいな話が出たときに「あっ、ってことはわたし自分自身の健康をちゃんと見ておかなきゃな、そろそろがん検診とか行かなきゃ」って思っていた矢先、36歳になる誕生日の前日に脇がめっちゃ痛いって気づいて。
姪っ子と遊んでいるときにすごい痛みを感じてなんだろうって。そしたら、その2日後にコリコリしたものを自分で触って発見して、あっ、これはやばいってそこからですね。
ゆかり:え、その最初に右にあったしこりは良性のしこりだってわかってたんですか。
さき:えっと右は何もしないで自然になくなって。で、過去に脂肪のかたまりだって言われたことがあったので、わたしはそういうのができやすいのかなって。まったくなくなってフワフワの柔らかい状態になったので違ったのかなって。
ゆかり:じゃあ左も同じかみたいな。
さき:そうなんですよね。
ゆかり:でも、さっきおっしゃってた乳がんの初期症状に痛みはないっていうたぶん看護師さんとしての知識がある意味邪魔しちゃったっていうか。
普通痛かったらなんだろうってなって、知識がないからお医者さんに行ってみようかなとかってなる気がするんですけど。知識がある分、たぶん向き合い方がさきさんは難しいのかなって。いろいろ知っちゃってる分。
さき:そうそう。あ、で、脇のしこりを見つけてクリニックに行ったときも、そのときの先生に「最初からめっちゃ痛かった」っていう話をしたんですね。
「がんの初期症状に痛みがあるっていうのはちょっとおかしいけど、サイズが大きいから一応検査しよっか」って言われたので、医療関係者は痛みがあるのは乳がんの初期症状じゃないっていうのは思いがちかもしれないですね。
ゆかり:じゃあ、さきさんは例外だったってことだね。乳がんでも初期に痛みがあることもあるっていうことだ。
さき:やっぱり違和感を感じたら自己判断をせずにお医者さんに行ってねっていうのは本当に思いますね(笑)。
ゆかり:ほんとですよね。今だからそう言えますね。さきさんはステージは3aだけれど、乳がんのタイプは?
さき:トリプルネガティブです。
ゆかり:お医者さんに行って、先生も痛みがあるなら乳がんじゃないんじゃないかな、でも見てみようって感じで見て、結果が乳がんでしたっていうのは、そんなニュースを聞く心構えはできてました?まさかって感じだったのかな。
さき:まさかって感じでしたね。診察室に入ったときに先生の机に資料が広がってて、わたしも目ざとく見ちゃうんで、悪性って書いてあるのが見えて…ひえーって。
やっぱり人ってびっくりしたり受け止められないときって呆然として。ぼーっと。で、じわじわ感じ出すともう涙が止まらないんですよね。
ど、ど、ど、どうしようみたいになって。めちゃくちゃ泣きましたね。クリニックは男性の先生だったんですけど、もう先生の前でわんわん泣いて。慰められ。
ゆかり:そっか。でも、ある意味、自分が乳がんだっていうことがその時点でピンときてそれが涙として出たってことなのかな。
わたしは全然実感が湧かなくて、治療を始めてやっと「あ、これは自分の身に起きていることなんだな」って思えた感じで。あれですかね、さきさんはこれまでもお仕事でも患者さんとかをみてきていらっしゃるのもあるのかな。
さき:どうかな。でもわたし、そのあと逃げたからやっぱり受け止めてはなかったのかもしれない(笑)。
ゆかり:そう、さきさんの治療用のインスタグラムのアカウントを見てもらうとわかるんですけど、逃亡したって書いてあって(笑)。どれくらい逃亡したんですか?
さき:3週間ですね。大きい病院に紹介されていろいろ検査をされて、胸の細胞をとる痛い検査をして、「あなたのがんのタイプはトリプルネガティブでステージは3から3aかな」みたいに言われて。
もう最初から抗がん剤治療の話が出ていて、もうわたしがやる・やらないの前に先生はいつから治療始める?とか。やっぱり先生は治すことを一番に考えて提案してくれるので、いつからだったら治療始められそう?みたいになったので、いやいやいや、待ってくれって思って。
ゆかり:うん。
さき:でも、一回は腹を括ったんですよ、もうやるしかないって。
ゆかり:最初に抗がん剤治療をするって聞いたときに腹を括った?
さき:一回だけ腹を括ったんですよ。でも、いやちょっと待てと。まだわたしの中では腑に落ちていないなってなって。
この状態で治療を始めて髪の毛が抜けていったりしたら、本当に死にたくなるし人のことを恨みそうって思ったので、もう治療計画を先生が立ててこの日始めますって言ったんですけど、一旦白紙に戻して。
しかも、先生には申し訳ないですけど、セカンドオピニオンに行ってくるって言いながら逃げた感じです。
ゆかり:なるほど。表向きはね。それはでも、さきさんの中で治療に対して、この流れに対して腑に落ちていないっていうのはどういう部分が大きかったんですかね?振り返ってみて。
さき:あー。ま、やりたくなかった理由が、卵巣にダメージが出て妊娠できなくなるかもっていう話を先生にされたときに、そのとき新しく出会ったパートナーと結婚して子どもを産むっていう未来を描いてすごくワクワクしてたときだったので。
あ、その未来が失われるの?卵巣の機能が戻ってくるとはいえ、先生が妊娠できるとは言えないけどって。生理が戻っても排卵しているとは限らないし、それで妊娠できるとは言えないけれど、治療が終われば身体は回復するっていう断言できない先生の言い方があって。
で、なんかそれがえ、じゃあ抗がん剤をしなくて済む方法ってないのかなとか。他の先生だったら、放射線治療とか切除だけでなんとかやってくれる先生がいるのかもしれないっていうのもあって腑に落ちなくて。
ゆかり:でも、それはほんと大きいですよね。特にパートナーさんに出会えてそういう未来を思い描き始めたタイミングで、もしかしたらそれが叶わなくなってしまうかもしれないっていう”かも”ってだけで、それはもうちょっと待ったですよね。
妊娠希望みたいな話は、ご自身で先生にしたんですか。抗がん剤によってその方面ではどういう影響がありますか?って。
さき:抗がん剤をすることによって出てくる副作用っていうところで、脱毛とか免疫抑制で、女性の場合は卵巣にダメージがあるから治療が終わるまでは妊娠できないしって先生はさらーっと言ったので、先生ちょっと待って!って。
え、妊娠できなくなるってことですか?ってわたしが聞いて、そしたら先生が「え、妊娠の予定がある?」って聞かれて、いや今すぐ妊娠ではないんですけどっていう話をして。
で、そこから卵子凍結の話とかも出たんですけど、わたしが今行っている病院では卵子凍結の対応はできないから、それが希望なら別の病院に行って卵子凍結の処置を受けてからの治療かなって話になって。
でも、卵子凍結に行くとまた初診で行って時間もかかるし、今すぐとれるわけじゃないってことも知ったので。
ゆかり:うーん。それは、パートナーとも話し合ったんですか?
さき:パートナーがすごく忙しくて会う頻度が少ないんですけど、会ったときに彼は「なんとかなる」って言い切るから(笑)。
ゆかり:そっか。じゃあまずはさきさんが元気になることが大事だよっていうことなのかな。
何が決め手になった感じですか?そういう話を聞いて怖い、どうしようってなってるときに、それでもやっぱり抗がん剤治療を含めた治療をしますって決心できた決め手みたいなものってなんだったんだろう?
さき:あー。えっと、まず3週間逃げた間ってわたしにとって大事な期間だったなって思うんですけど。
先生にセカンドオピニオン行ってきますって伝えた日に、先生にこう言われたんです。
「日本で乳がんで亡くなって有名な人だと海老蔵さんの奥さんがいるけれど、あなたは彼女と同じタイプのがんで、まおちゃんは民間療法をやっている間に治療が遅れて手遅れという状況で病院に入院してきたんだよ。だから、あなたは民間療法で治る状況じゃないからね」って。
なので、3週間逃げる間、逃げてもこの子はなくならないんだなってすごくおっぱいと向き合って。で、家族とか友達が誰も治療のことを聞いてこなくて。
ゆかり:あ、そうなんですか。さきさんが乳がんだってことは伝えたけど、具体的なことを何も聞かれない?
さき:なんか見守ってくれてた感じで。たぶん、さきは受け入れようとしているんだろうな、準備してるんだろうなって。思ってたけど聞けなかったっていうのが本音らしいんですけど。
ゆかり:うんうん、でもまあそれはわかりますよね。
さき:で、そうですね、決断した日に、まずわたしの父がすごく心配してくれていて、治療をしないっていうことが、もう生きるのを諦めているのかっていうくらい父はすごく心配していて。
で、父の気持ちもわかるけど、わたしの気持ちもわかってよみたいな感じでちょっと喧嘩になったんですね。父の気持ちもわかるし、やっぱり治療しなきゃなって思っていた夜にですね、パートナーから連絡がきて、「ま、いろんな症状が出てるけど、今だけだよ。今年だけ」って言ってくれて、あ、そうだな、今年だけかってなんかそのとき思えて。
ゆかり:軽くなった?
さき:そう、軽くなった。だから、父が喧嘩でわたしを吹っかけてくれて、パートナーが背中を押してくれた感じで。で、やっぱり子どもが欲しいなら卵巣の機能を戻すのは少しでも早い方がいいなって思えたので、じゃあやっぱり抗がん剤は一日でも早くしなきゃって思えた感じです。
ゆかり:でも、やっぱりさきさんの中でそれだけ妊娠する、子どもを産むっていうのが大きかったんだろうなって思うのは、わたしはむしろ「あなたは乳がんです、ステージ3です、グレード3です」って言われたときにもう一刻も早く治療を始めたかったんですよね、なんか怖くて。
アグレッシブながんだって言われていたので、待ってる間にもどんどん大きくなっててそれも触って実感としてあったので。だから、抗がん剤でも何でもいいからやりますって感じだったので、だからさきさんの中でそれだけその思いが強かったってことなんですよね、きっと。
さき:そうですね。わたしけっこう長い間彼氏がいなくて、人と関わって生きていくのがめんどくさいだなってもうなんか嫌になっていたんですね。
なので、長生きもそんなにいいかなとか。でも、姪っ子たちとの生活は好きだから、姪っ子たちが大きくなるまではわたし生きてたいとか。
あんまり生きるってことに執着がなかったんですけど、なんか出会えたことにとってわたしやっぱり母になりたいかもって思えたのがあって。その矢先だったのでショックはショックなんですけど。
ゆかり:ね。パートナーさんはサポートしてくれていて、なんだろう、わたしは結婚をしていて、旦那とパートナーだと「あなたは乳がんです」って女性が言われたときに、旦那だとサポートしてくれて当たり前みたいなところがちょっとある気がするんですよね。
だってもう選んでパートナーになってるんだし、子どもも一緒に育ててるしみたいな。それが大前提みたいなところがあるんですけど、さきさんはパートナーに対してどこまで求めるのかとか難しかったりするのかなと思って。
さき:たしかにそれは難しくて。どこまで言っていいのかな、弱音を吐いていいのかなとか。それはもともと彼がLINEのやり取りとかもマメじゃない人なので。
なので、大事な話をしても途中で会話が終了しちゃったりするとあららららみたいになって。たしかにパートナーと旦那さんだとどこまで支えてもらうというか。
ゆかり:ね、そうですよね。ま、でもさきさんのパートナーさんがおっしゃっていたみたいに今年だけだからっていう期間限定ではあるけれど、それでもちょっと覚悟をしてもらう必要があるというか。
さき:あ、そうですね。それは聞いたことがあって。「わたしががんだって聞いて、重く感じたりちょっと引いたりとかなかったの?」って。
なんか身内の方でがんになった方がいたからちょっと知識はあったみたいで、わたしも年齢的にも何があっても不思議じゃないというか。だから冷静でしたね。
ゆかり:でも、それはちょっと救いですね。あまり取り乱されてもこっちも取り乱したいから(笑)。
さき:だから唯一の救いでしたね、彼が冷静なのは。
ゆかり:普段、本音とか弱音をぶつけられる相手は周りにいらっしゃいますか。
さき:やっぱり妹とか友達は聞いてくれてますね。わたしも彼女たちには言ってますね。女性ならではの悩みというか。
ゆかり:やっぱりお友達は看護師仲間が多かったりするのかな?
さき:そうですね、看護師仲間が多いですね。
ゆかり:それってまた違う世界ですね。わたしは友達に話しても、そんなに知識もないし。
さきさんの周りで看護師さんが多くてそれがお友達とかだったりすると、知りたくないことも入ってきてしまうことがありそう、なんとなく。看護師さんの言葉だから重みがあるじゃないですか、何を言われても(笑)。
さき:たしかに(笑)。なんか、がんセンターで働いていた友達から、わたしがインスタを投稿したことをきっかけに連絡がきて、「今の薬は発達しているし、絶対大丈夫」って言ってくれたのとかはすごく心強かったのでそれは良かったなって。
ゆかり:たしかに。そう、エピソードのメモのところにも書くんですけど、わたしがすでにフォローしているインスタの治療用のアカウントじゃなく、さきさんの本アカって今ここで言ってもいいですか。
さき:あ、大丈夫です。じゃあアカウント名を言いますね。@alice_sk3です。こっちは本名でやってるので。
ゆかり:で、こっちの本アカでも周りの方にシェアしたってことなんですね。ちなみに最初にあくまで乳がんの治療について発信するアカウントをつくって、その後に本アカでもみなさんに伝えようって思った感じですか?
さき:そうです。治療だけをまとめたのを作ろうと思って作ったんですけど、インスタとかSNSってなんかすぐに「知り合いかも」ってので出てきて、作った日に高校の同級生とかがそれを見つけてて(笑)。
で、そのときに「見つかったー」って気持ちになってしまって。でもなんか、時間を置いて考えのは、どっちもわたしだし、どっちもわたしの現状なのになぜ治療のほうだけ見つかったっていう感覚なんだろうって思ったときに、あ、やっぱり病気のことを隠したいとかってあるのかなって。
でも、病気になったことが悪いわけでなないのになんでこんな後ろめたい気持ちで隠そうとしてたんだろうって思って。で、隠す必要ないよね、これもわたしだしっていうのがあって。別々でアカウントを分けてやるっていうのはなんか隠してるような変な気持ちになって。
ただ、私はやっぱり人から応援されたい、なんか見守ってもらえることで力をもらえるなって思ったので、そういう気持ちも込めて、もともと使っているアカウントで実はこうですって投稿しました。
ゆかり:うんうん。わたしも最初はなんですかね、日本人のメンタリティなのか人に頼らない自分の性格みたいなものがあってなのか、言わないでおこうって思っていて。
でも、旦那とか義母とかに「言ったほうが情報いっぱい入ってくるし、いっぱい繋がりもできるし、むしろなんで言わないの?」って言われて、たしかになって思って。
でも、そうやって言ったからこうやってさきさんとも繋がれてるし、他のインスタのアカウントの方とも交流ができてるのでそうして良かったと思いますね。
さき:うん。
ゆかり:ちなみにさきさんの治療の流れは、今パクリタキセルをやられてて、この後はECでしたっけ?
さき:EC療法を4回です。
ゆかり:じゃあ本当に一緒だ。わたしはACなんですけど、ホルモン陽性タイプの乳がんなので。そこだけ違うけど、でも抗がん剤で手術で、放射線治療。
さき:そう、フルコースで(笑)。
ゆかり:ですよね、フルコースなんですよ(笑)。手術で全摘するのかどうかとかってもう考えてますか?
さき:できれば、部分でと思いますが、検査次第。乳頭から遠いところに腫瘍があったら残せる可能性もあるみたいで。抗がん剤が効いて、その結果がどうかっていうのはちょっとワクワクはしてるんですけどね。
ゆかり:実際、パクリタキセルをこれまでに7回やって小さくなってる?日本だとエコーとかで確認できるんですよね、途中でも。
さき:わたしは来週エコーなんですけど、今、触診で脇のリンパは触ってもわからないくらいで、胸のほうも柔らかくなってきて変化を感じてます。
ゆかり:素晴らしい。なんかそういうのあると、というかそういうのがないと逆に頑張れないっていうか(笑)。なんかしら手応えをくれみたいな。
さき:ほしいほしい(笑)。
ゆかり:そっか、でもそうですよね。これもさっきのパートナーさんとか今後のことみたいなのもあるけど、わたしはまた同じ思いをするのは嫌だから両胸全摘しちゃおうと思っていてたぶん再建すると思うんですけど。
やっぱり出会って幸せもこれからみたいなタイミングだから、できるだけ今までお世話になったお胸ちゃんを残したいっていうのはわかる。
さき:なんか再建に対して、なんていうんですかね、女性ならではの母性なのか、再建したとしてもそれはもともとのわたしの胸じゃないんだよっていう思いがあって。
パートナーじゃないんですけど、他の人から「全摘しても再建すればいいじゃないか」ってたぶん善意でのアドバイスだと思うんですけど、いやー、失ったものをそう簡単に再建できないよっていう複雑な女心というか(笑)。
ゆかり:いやー、でもほんとそうですよね。すごく再建がうまくいって、わたし自分の新しい胸大好きみたいな人もいるから、それはそれで素晴らしいんだけれど、でもやっぱり別物ですよね。
なんだっけ、これも元気にさせようと思って友達が言ったことなんですけど、「え、いいじゃん、乳がんで治療頑張って治ったらタダで(保険がカバーしてくれるから)おっぱい作れるんだよ」みたいな。
タダで胸が大きくなるんだよとかって言ってる子とかいて(笑)。全然違うからそこって(笑)。
さき:違う違う(笑)。
ゆかり:あ、そう、さきさんに聞きたかったのが、抗がん剤治療やりますってなって、パクリタキセルを12回とわたしの場合はACを4回って話があって、順番はあなた次第よって言われたんですよね、先生に。強いACを先にやってしまう人もいれば、その逆もあるんだけど。
わたしの場合は、子どもたちが今5歳と3歳でベビーシッターとかっていうケアを見つけてから出ないといきなりわたしが機能しなくなったら旦那がもたないのでそういう時間稼ぎの意味もあって、まだ副作用が比較的軽いパクリタキセルからやるって決めたんですけど、さきさんはそれは先生が決めたことだった?
さき:そうですね。その病院のやり方がその流れになっていたみたいで。3週間逃げてた間にかぶれみたいなすごい痒みがでたんですね。左胸から始まって上半身に広がっていって。受信の予約をとってたんですけど、痒すぎて待てず、ちょっと早めに病院に行って。
そしたら先生がその日のうちにもう抗がん剤を始めるよって予定を立ててくれたんですね。ECを先やるか、パクリタキセルを先にやるかとか決めるような判断がわたしにはできず。先生が一番いいって思ってくれた流れに乗った感じで。
ゆかり:そっかそっか。え、そのかぶれは乳がんには関係なかったのかな?
さき:そう、一瞬ドキッとしたんですけど、がんが暴れ出したからではなく、何かにかぶれて拡がったっていう診断でした。
ゆかり:でも、あれですね。そうやって先生がこういう治療プランで行きましょうって言ってくださったのに対して、それをそのまま素直にやりましょうって言えるっていうのはそこに信頼関係があるっていうことなのかな。今の先生との。
さき:そうですね。一回治療から逃げた場合、先生もなんかなんだろう、拒否はないんですけど、あまりいい思いしないかなってわたしの中ですごくドキドキして行ったんですよ、なんで来たのって言われたらどうしようとかって。そんなこと言わないんですけど。
でも、行ったときに胸がどうっていう状態だけ見て、皮膚科に紹介してくれたり、で先生はそこで改めて「やっぱり先生は抗がん剤したいと思うんだけど、気持ちはどう?」って確認してくれて。
で、「わたしは今日抗がん剤をお願いしたくて来ました」っていうことを言えて。なんで先生がすごい何もなかったかのように受け入れてくれたので、なんかこの先生に任せようって思えたんですよね。
ゆかり:これはさきさんの看護師さんとしての知識みたいのに聞きたいって話なんですけど、最初に話した白血球の数が毎回ドキドキって話。
それこそ、さきさんのインスタの投稿を見て「今日抗がん剤できるか?」みたいな投稿を見て、あ、そこやっぱりすごい気にしなきゃいけないとこなのかなと思って、これまでもらった血液検査の結果を見てみたら毎回確実に下がっていってて。
でも、そういうもんなんですよね?
さき:そうですね。確実にちょっとずつ弱ってってますね。
ゆかり:そうですよね。それだから、普段は風邪を引かないのに今回お風邪を引いてしまったのもやっぱりそういうところってことですよね。
さきさん今ちょっと風邪を引いてらっしゃるから。でも、これでなんかECとかACに次いったら、それってもっとガクンと下がるんですよね?
さき:そうそう。なんで、もともと白血球をあげる薬を注射で事前に打って上げていく人とかもいて。3週間置きに打てる薬があって、それはECとかACのときに使うんだとは聞いてますね。
ゆかり:そっか。あれ、ちなみにさきさんはECは2週間に1回?それとも3週間に1回ですか?
さき:3週間に1回です。
ゆかり:それが標準なんですかね。わたしは2週間に1回でそれが標準っぽいけれど、日本だと3週間に1回なのかな。
さき:今までの乳がんサバイバーの方の治療の記録をみていると、3週間に1回っていう方が多いですね。あと、トリプルネガティブになった方へっていう標準治療が書いてる冊子があるんですね、日本には。そこにも3週間置きって書いてあるので。
ゆかり:それだけダメージが大きいんですもんね。だから回復期が必要ってことですよね。ちなみに今パクリタキセルの副作用は、さきさんはどんな感じですか?
さき:あー、時々味覚障害があってお水が美味しくないなとか。
ゆかり:なんか鉄っぽい味みたいなこと?
さき:鉄だったりちょっと苦いっていうんですかね。ミネラルウォーターが苦くてちょっと飲みづらかったり。あと脱毛はしてる。
ゆかり:ウィグかわいいです、いまかぶってるやつ。なんか日本のはやっぱりいいですよね。わたしもこの前日本から母が来てくれたので日本で買って持ってきてもらったんですけど、なんか違う。リアル感というか。ザ・かつらじゃない感じで手軽に被れる感じ。
さき:ちゃんと、つむじだったり分け目が自然につくられてるので。しかも安い。安くいろんなのを試せるので、それはやっぱ今ウィグ生活を楽しむ上ですごくありがたいですね。
ゆかり:普段できないですもんね、そんな楽しみ方。乳がんだってことがわかって治療を始めて、自分の生活への向き合い方だったり、自分のメンタルとかでもいいんですけどどんな変化がありましたか?
さき:まず、仕事ができなくなって収入がなくなったらどうしようっていうのはあって。
なんか家族は支援するとは言ってくれたんですけど、さすがに半年以上って長いし、その間働けなくて寝てるとかってえ、無理だなって最初はすごく思ってたんですが、今仕事に行けて、時々風邪をひいて休むみたいなのはあるんですけど、仕事に行けてるってすごく幸せなんだな。仕事があるってすごい幸せって今思います。
やっぱり人と会ってしゃべることってわたし大好きなんだなって思って。仕事で訪問看護なので常に5〜6人の方としゃべるんですけど、どんな形であれ対話できるってわたし幸せだなって。仕事がモチベーションなところありますね。
ゆかり:そっか。乳がんだってなってガラッと変わったことで、それまで当たり前にお仕事をやってらして、当たり前に仕事ができるとか仕事があるってことに対する思いが変わった感じなんだ。
さき:会社の上司とかも体調を気遣ってくださってみんなが気を遣ってくれているっていう優しさとかも感じて、めちゃくちゃいい職場だなって改めて思ったので。うん。
ゆかり:なんかでもほんとに周りとの絆みたいなのは絶対的に深まりますよね。標準治療以外にさきさんがご自身で取り入れている食生活でもいいですし、エクササイスとかなんでもいいんですけどやってらっしゃることってありますか?
さき:えっと、もともと香りが好きなので、メディカルアロマを日々取り入れていて、皮膚の保湿にしろ、その日の気分に合わせて癒しだったり、身体がむくんできたと思ったらむくみケアのオイルを使ったりして日々自分を癒すとかですね。
サプリとしては、これはおすすめされたレスベラトロールっていうのは、細胞一個一個を元気にしてくれるっていうことで抗がん剤の副作用に身体が負けないように助けてくれるような作用があるってことでわたしは信じで飲んでますね。
ゆかり:そういうのって情報はいろんなところから入ってくる感じですか?
さき:けっこう飲んでた方がみんながん体験していて、治療を終わった後も飲んでるよとか。がんに効くっていう結果があるわけではないんですけど、皆さんの体験談を聞いてきっといいだろうなって。
なんかこれはぶどうの種とか皮からとる抗酸化物質みたいなものだったと思うんですけど、なので病気にならないように予防のためにとるものだと思うので治療にいいとは絶対には言えないですけど。
ゆかり:そうなんですよね。最近だったら、あれ日本語でなんていうんだろう、要はきのうの一種なんですけど、このきのこはすごくいいらしいよ、日本では昔からがんの治療に使われてたらしいとかっていう情報をもらったりして、こっちのオーガニック系のスーパーのホールフーズなんかでも売ってるものなので怪しいものではないんですけど。
でも、やっぱり抗がん剤治療をやっている間だと、その効果をたとえば邪魔してしまうようなこととか飲み合わせとかあるのかなと思って下手になんでも飲めないなっていうのがあって慎重になっちゃったりするんですけど、そういうのって先生に相談してます?
さき:わたしはしてないですね(笑)。してないので全部治療が終わったときにこういうことをしてたよっていうのはあげようと思ってるんですけど。
日本の先生で民間療法を取り入れるというか、サプリを取り入れることを推奨している先生はごく稀で。
なので、一回腸内環境を良くしておいたら抗がん剤の副作用が出づらいですかって質問を主治医にしたんですけど、「腸内環境は普通に良くしておくのは健康のためにはいいけれど、そのためにわざわざサプリとかとらなくていいし、神経質にならなくていいよ」って言われたので、やっぱり先生たちは標準の治療をすすめていくので。
ゆかり:わたしも今まで高濃度のビタミンC注射とかどうですか?とかいろいろ聞いたけど、基本はやっぱりデータが揃ってないから絶対に効果があるとも言えないし、それこそ抗がん剤の作用を妨げてしまうかもしれない、それもなんとも言えないから余計なことはしてくれるなみたいな(笑)。ちょっとそういうスタンスですね、うちの先生も。
ちょっと話が戻っちゃうんですけど、治療が始まってこれからお仕事とかできなくなったらどうしようっていう不安があって、保険の話もリアルな話でみんな気になるところかなと思うので聞いてもいいですか。
さき:わたしは最初にも言ったように長生きする気ないなみたいなのがあったんで、わたし自身は保険に入ってなくて、親が入れてくれる保険が一個あるだけで。
わたし自身がこうしたほうがいいのかなって選んだ保険はなくて、がん保険も入ってなくて。なので、まず本当にそこですよね。がん治療はお金がかかるってのがあったから、まずはがん保険に入っておけば良かったなっていう後悔。
日本には高額医療費制度とかっていうのがあるんですね。どんなにかかっても、毎月これ以上かからないよっていうある程度抑えてくれるような制度があって。なので、本当にそれに助けられている感じですね。
ゆかり:なるほどなるほど。ほんと日本の医療システムは良心的ですよね。じゃあ、がん保険ではない形で対応する術があったっていうことなんですね。
さき:SNSでやっぱりがんにかかると副作用も心配ですけどお金の面が大きいなと思って調べたところ、がん保険に入ってなかった方ってわりと多くて。
で、その方がどうしたかっていうと高額医療費制度がすごく助かってっていうのをみて、あ、めっちゃ日本に生まれてよかったっていう。
ゆかり:ですよね。ほんとにそれはそう思います。ちょっとさっきのお仕事の話に戻ると、今はじゃあパクリタキセルで副作用がちょっとはあるけれど日常生活に問題ないからお仕事も続けられている。 この先、本当に抗がん剤治療も手術でもそうですけど、その人それぞれで全然違うから、術後が一番大変だったっていう人もいれば、抗がん剤が一番辛かったっていう人もいて蓋を開けてみないと自分でどうかってわからないから計画が立てられないじゃないですか。
だから、それこそ、さきさんの場合はECをやるタイミングでどうなのかって、もし万が一辛くてお仕事に行けないっていう感じだったらその期間はお休みさせてもらうみたいな感じで会社とお話できてるのかな?
さき:そうですね。まず、わたしの会社はわたしの勤務年数に合わせてだと半年なんですね、休職期間をもらえるのが。なので、抗がん剤を早々に休んでしまうともう退職しかなかったていうところもあって。
だから働けないと大変って思っていたので、放射線は毎日通わなきゃいけないのでたぶん仕事行けないなと思うので、おしりに合わせて半年を考えていくと‥。
手術中に休職になるのかもしれないし、手術のときと放射線だけで3ヶ月くらいおやすみになるかなーとか。今相談させてもらってます。
ゆかり:でも、放射線って所要時間は短いんですよね。フレックスとかにしてもらえたらいいんですけど、って勝手な希望ですけど。1時間遅れての出勤で。
さき:それで済むなら休職しなくて済みますね。ゆかりさんは25回ですか?
ゆかり:回数言われてたかな。もうちょっと多かった気もするけど具体的な回数は言われてなくて。さきさんは?
さき:25回です。
ゆかり:じゃあ約1ヶ月、今月がんばろうみたいな感じの。
さき:土日はできないよって言ってたので平日だけだから1ヶ月半くらいは。
ゆかり:そっかそっか。なるほど。でもなんかそういう先の話をするとちょっと希望というか、そこまで言ってる自分が現実味を帯びて。
この前、外科医の先生を変えたんですね。変えたというか、もともと紹介してもらった先生は産休でいらっしゃらなくて代わりの先生に診てもらっていて。でもあまり相性がよくなかったので、産休だった先生が帰ってこられるってことで会いに行ったんです。
そのときに、じゃあこのままパクリタキセルをやってACをやったらいつくらいには終わってるはずだから、1ヶ月のおやすみ期間があって身体を休めて、そしたら手術日はこれくらいだねみたいなけっこう具体的な話ができて。
その頃にはそうなってるのかなって思うとすごく幸せになりました。
さき:いいですね。
ゆかり:さきさんはまだ手術の話とかはしてない?
さき:年内にできたらいいねって言ってて。ちょうど8月に今のパクリが終わってECがすぐに始まるのかそこはちょっとまだわかんないんですけど。
ってなるど、8月9月10月11月にECの4回目が終わったー!ってなって年内に手術ってなるのかなって先生は言ってましたね。年内にオペ室が空いてたり予定次第だけど年内にできるかなって。年内に一通りひと段落つけられるかもしれないなって。
ゆかり:そうですよね。年内に山場があって、あとは放射線治療だったらなんとかできる気がする(笑)。最後に、これか乳がんの治療に向き合う人に伝えられること、伝えたいことはありますか?
さき:そうですね。いい悪い関係ないし、環境にしろ、自分の身体にしろ、人間関係にしろ、大きな変化があるので変化に対して不安を感じるとは思うんですけど、絶対大丈夫って。先を走ってくれる仲間も多いですし、一緒に走ってる仲間もいるし、絶対ひとりじゃないから大丈夫って。本当に思います。
ゆかり:そう、今さきさんもわたしもめちゃくちゃ頷いてます。ポッドキャストなので音声だけだから見えないですが、すごい頷いてます。ね、大丈夫。
ありがとうございます、さきさん。ゆっくりお話できて嬉しかったです。
さき:ありがとうございます、本当に。
ゆかり:とんでもない。またインスタで@alice_sk3でさきさんは見つかるのでぜひフォローしてください。ということで、今回のこんちわのゲストはさきさんでした。ありがとうございました。
さき:ありがとうございました。
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